top of page

Research

チューリップ畑_木曽三川公園.jpg

植物の「発明」

〜繁栄を支える生殖のしくみ〜

花を咲かせる植物は被子植物と呼ばれ、白亜紀初期に誕生し、現生陸上植物の約80%を占める35万種以上にまで爆発的に繁栄したと考えられています。この繁栄を支える被子植物の「発明」の一つが、花粉による有性生殖様式の誕生です。乾燥した陸上で確実に子孫を残すため、メスの配偶子は母体の組織深くに包まれ、オスの配偶子も硬い殻を持つ細胞に包まれるよう進化しました。このオスの細胞が花粉です。

花粉は全ての被子植物に共通の器官です。その発生から受精までの過程を明らかにすることは、生命の基本原理や進化学的意義を理解するだけでなく、農業、食品、環境分野における課題解決にも重要です。しかし、被子植物の生殖は花の奥深くで起きため観察や解析が難しく、そのしくみには未だ多くの謎が残されています。私たちはこの花粉に着目し、研究に取り組んでいます。

もっと詳しく知る(動画)

被子植物の生殖過程

花粉は被子植物の雄性配偶体であり、花粉の中には雄性配偶子である2つの精細胞が包まれています。被子植物の精細胞は進化の過程で鞭毛を失ったため、自ら運動してメスにたどり着くことができません。そこで、花粉は花粉管と呼ばれる管状の細胞を伸ばし、内部の精細胞を胚珠へと送り届けるしくみを作り出しました。花粉管はめしべの中を伸長し、迷いなく胚珠へと辿り着くことで、卵細胞と中央細胞に精細胞を受け渡し、重複受精により種子が作られます。

これらの過程は、乾燥した陸上で確実に子孫を残し、繁栄するために植物が進化させてきた独自の生殖様式です。

被子植物の生殖過程

花粉の発生と分化

花粉は減数分裂後に小胞子と呼ばれる1細胞が非対称分裂し、大きい栄養細胞と小さな雄原細胞に分化します。一方で、様々なストレスを受けて対称分裂してしまうと、どちらも栄養細胞となり、受精できない花粉となってしまいます。

私たちはベンサミアナタバコの花粉を生体外で発生させ、経時的に解析するライブイメージング系を初めて確立しました(水多 2023)。また、小胞子に一過的に遺伝子を導入し(Nagahara et al. 2021)、細胞内構造や遺伝子機能を迅速に解析する手法を確立しました。

花粉の発生と分化
花粉の発生過程における細胞骨格の役割と核の挙動

細胞周期と細胞骨格の動態解析から、アクチン繊維が分裂前の核の極性移動、および分裂後の栄養細胞の分化を制御していることが明らかとなりました(Mizuta et al. 2025)。さらに遺伝学的解析やオミクス解析を組み合わせることで、1つの細胞から異なる2つの細胞が生み出されるしくみや、細胞が受精能を持つ分子機構の理解を目指しています。

花粉管誘引と多精拒否

シロイヌナズナのめしべでは、胚珠は花粉管を1本ずつ誘引し、他の花粉管を拒否する一対一誘引、すなわち多精拒否を示します。これにより、少ない花粉でもより多くの種子を作ることができます。一対一誘引には雌雄の細胞間コミュニケーションが必要であり、近年、ペプチドや受容体など複数の因子が同定されました(Mizuta and Higashiyama 2018)。しかし、花粉管の誘引はめしべの奥深くで起きる現象のため、解析が困難であり、研究が進まない原因となっています。

 

私たちは二光子励起顕微鏡を用いて、めしべ深部を透明化する方法(Kurihara et al. 2015; Mizuta and Tsuda  2018; Niimi et al. 2022)(下図A)や、生きたままイメージングする方法(Mizuta et al. 2015; Mizuta 2021)(下図B)を確立しました。変異体を用いることで、一対一誘引には母体の体細胞と雌性配偶体の細胞膜上のタンパク質、そして花粉管の数と位置が重要であり、多段階かつ時空間的に花粉管を制御するしくみが明らかとなりました(Mizuta et al. 2024)(下図C)。多精拒否を制御する分子や細胞動態に着目することで、被子植物が進化の過程で獲得した子孫繁栄のしくみを明らかにしようとしています。

めしべ深部のライブイメージングと一対一誘引のしくみ

花粉を用いた植物生殖工学技術の確立

​花粉は単離細胞のため、雌性配偶体に比べて操作が容易です。また、次世代に伝わるオスゲノムを運ぶ、いわば「ベクター」細胞でもあります。私たちは​花粉に分子を導入してゲノムを改変し、次世代に目的の形質を付与する方法の開発に取り組んでいます。これまでに、ゲノム編集酵素であるCRISPR-Cas9を花粉に一過的に導入し、オスゲノムを迅速に編集する技術を開発しました(Nagahara et al. 2021)(特許)。また、高効率なゲノム編集酵素の開発(特許)や導入法の確立も進めてきました(特許)、導入花粉のみを近赤外レーザーで1つずつ選抜し、受粉に用いる方法(Kaneshiro et al. 2022)の開発も行なっています。これらの技術を融合することで花粉の発生を制御し、目的の植物をデザインする植物生殖工学技術の確立を目指しています。

遺伝子導入と細胞の顕微操作

もっと詳しく知る(雑誌・テレビなど)

Copyright © 2026 Mizuta Lab., All Rights Reserved.

bottom of page